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ICBC|路上の署名集めが、世界最大級の大麻ビジネスカンファレンスの旗手に

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眼鏡をかけた灰色の短髪のICBC創業者、Alex Rogersが、黒いポロシャツを着てステージ上でマイクを持ちながら話している

ヨーロッパの大麻業界には、誰もが知る「舞台」があります。

国際大麻ビジネス会議『ICBC(International Cannabis Business Conference)』。

International Cannabis Business Conference – The premier B2B cannabis industry event

ICBC公式サイト

80カ国以上から大麻関連の起業家、投資家、政策立案者が集まる、欧州で最も格式高いB2Bイベントです。

その創設者にして、エグゼクティブ・プロデューサーが、Alex Rogers(アレックス・ロジャース)。

CBDライブラリーも、過去2回、『ICBC』の会場で顔を合わせてきた人物です。

誰に対しても「ブラザー」と呼びかける、底抜けに陽気な男。

しかしその半生は、陽気さだけでは語れません。

伝説の活動家ジャック・ヘラーの直弟子。

ドイツでの獄中生活。

「国際大麻ビジネスなんて存在しない」と笑われながらの起業。

そして今、彼の視線の先には「東京」があります。

路上の署名集めから始まった。師ジャック・ヘラーとの出会い

The Emperor Wears No Clothes(皇帝は服を着ていない)第11版 表紙 - Jack Herer著。中央に大きな緑の大麻の葉を配置し、周囲に歴史的なイラストが描かれた有名な大麻・ヘンプ本の表紙。

アレックスの原点は、1993年のカリフォルニア州サンタクルーズにあります。

ミネソタ州ミネアポリス出身の彼は、ガールフレンドの大学編入を機に西海岸へ移住。

そこで出会ったのが、名著『The Emperor Wears No Clothes(皇帝は裸だ)』の著者であり、「ヘンプの皇帝」と呼ばれたジャック・ヘラーでした。

「ジャックは私のメンターであり、大麻に関するほぼすべてを教えてくれました。ヘンプは世界を救えると。自然と私はカリフォルニアの各都市で、署名集めを手伝うようになったんです」

ジャック・ヘラーが主導した『カリフォルニア・ヘンプ・イニシアチブ』は、「大麻をトマトのように扱おう」という、当時としてはあまりに先進的な住民投票運動。

達成不可能だと、本人たちも分かっていました。

それでも路上に立ち続けた。

この「勝てない戦」こそが、若きアレックスの最初の修行でした。

その後、彼はヒップホップグループの『サイプレス・ヒル(Cypress Hill)』、合法化団体『ノーマル(NORML)』、「メディカル・マリファナのゴッドファーザー」ことデニス・ペロンなど、アメリカ大麻史のレジェンドたちと共に活動していきます。

姉はプリンストンへ、私は刑務所へ

Alex Rogersがステージ上でマイクを持ち、左手でジェスチャーをしながら熱心に話している横顔。ライトグレーのセーターを着用し、照明に照らされた講演シーンのポートレート。

大麻侍の物語に、試練は付き物です。

20代でヨーロッパへ渡ったアレックスは、アムステルダムの名門コンサートホール『メルクウェグ(Melkweg)』で、世界的大麻イベント『ハイタイムズカナビスカップ(High Times Cannabis Cup)』の会場運営を担っていました(1998〜2003年)。

しかしその裏で、生活のために大麻の販売に手を染めていた過去を、本人は包み隠さず語ります。

数年後。

すでに足を洗い、スロベニアで歌手として新たな人生を歩み始めていた矢先、国際手配により飛行機から降ろされます。

オーストリアで約1ヶ月の勾留。

ドイツへ移送され、バイエルンの刑務所で約6ヶ月を過ごしました。

「姉はプリンストン大学へ、私は刑務所へ行った。私はミネソタの中流家庭の子です。植物を売っただけとはいえ、当時の法律で間違ったことをしているのは分かっていた。愚かでした。でも、あれが人生の大きな転機になったんです」

過ちは認める。

しかし、信念は曲げない。

出所後の彼は「合法的な枠組みの中でこそ、この産業を育てる」という道へ、完全に舵を切ります。

大麻の「暗黒時代」を終わらせ、科学とビジネスが共存する現代の隆盛を築き上げたのです。

「国際大麻ビジネスなんて存在しない」と笑われて

ICBC Berlin 2026 Cannabis B2B Trade Showのパネルディスカッション。ステージ上で5人のスピーカーが白いソファに座り、聴衆の前で議論を行っている様子。右端の男性がマイクを持ち話しており、背景に大きな黄色のICBCロゴとスクリーンが映っている。

帰国後、政治学の学位を取得したアレックスは、2009年に医療大麻クリニックを設立。

医療大麻のテレビCMを放映した最初期の人物の一人として、米国西海岸の医療大麻普及に貢献しました。

2013〜2014年には『オレゴン・マリファナ・ビジネス・カンファレンス』を創設し、州最大のB2Bイベントへ成長させます。

そして次の野望が「国際化」、すなわち『ICBC』でした。

「2017年に初めてベルリン開催を決めたとき、周囲には『アレックス、何をやっているんだ。国際大麻ビジネスなんて存在しないぞ』と言われました。ドイツ人たちにも『チケット1枚500ドル?本気で心配しているよ』と。私も怖かった。でも、ビジョンがあったんです」

その読みは的中します。

カナダの連邦合法化、ドイツの医療大麻市場の急成長、チェコ、スペイン、コロンビア、イスラエル、オーストラリア。

世界は一気に動き出し、『ICBCベルリン』は80カ国以上から参加者が集う、世界最高峰のB2Bイベントへと成長しました。

2026年のベルリン開催では、記念すべき10回目を迎えました。

「大麻業界の1年は、ドッグイヤー。普通の業界の10年分の変化が起きます。だからこそ、世界中のプレイヤーが一堂に会して、顔と顔を突き合わせるネットワーキングに、何よりの価値があるんです」

欧米の「今」を斬る。米国は成熟、ドイツは沸騰

アメリカの規制物質法(CSA)における大麻の再分類を示すインフォグラフィック。

インタビューでは、欧米の最新政策についても語ってもらいました。

まずアメリカ。

「大麻がスケジュールIからスケジュールIIIへ再分類されました。これは前進です。一方で課題は、農業法(Farm Bill)の抜け穴から生まれた酩酊性ヘンプカンナビノイドの市場。政府は規制を試みていますが、すでに巨大なビジネスが形成されていて、完全に止めるのは難しいでしょう」

「アメリカ市場は、ある意味で成熟期に達しています。連邦レベルの合法化がない限り、再びの爆発的成長は望みにくい」

一方のヨーロッパ、とりわけドイツは対照的です。

「ドイツの医療大麻市場は、今年だけで約20億ドル規模に達する見込みです。事実上、嗜好用に近い市場が形成されています」

ドイツでは保守政権の誕生により、規制強化の議論もあります。

しかしアレックスの見立ては明快です。

「連立与党には社会民主党も入っており、ドイツには大麻より優先すべき課題が山積している。規制後退の動きは、事実上止まっています」

「非犯罪化(屋外25g・自宅50gの所持、自宅3株の栽培)も、全面撤回はないと見ています。これは『合法化』ではなく『非犯罪化』。だからこそ保守派も、強硬に反対しきれないのです」

そして、彼が2017年の初回ベルリンから言い続けてきた、活動家としての公共政策の原則。

「規制当局は、必ず何かをやらかします。だから最も重要なのは、刑事罰の撤廃と、誰もが自宅で植物を育てられる権利。この2つさえ守られれば、ヒッピーも大企業も、みんなが幸せになれるんです」

日本へ。「最大の壁は法律ではなく、文化です」
話題は、いよいよ日本へ。

ICBC Berlin 国際カンナビスビジネス会議の様子をまとめたコラージュ。会場内のネットワーキング、大規模展示ホール、企業ブース(Auricanna、DEMECANなど)、参加者同士の交流シーン、近代的な建物外観を収録

インタビュアーが「日本では、フルスペクトラムCBDが医療大麻の入り口になりそうだ」と伝えると、彼は前進を認めつつ、こう釘を刺しました。

「それは確かな第一歩です。しかし、本当の意味での医療大麻とは言えません。多くの患者にはTHCが必要だからです。重要なのは『アントラージュ効果』。CBD単体ではなく、多様なカンナビノイドがそろってこそ、植物本来の力が発揮されます」

「チェコやスイスではTHC1%まで認められています。ヨーロッパの感覚から見れば、日本はまだ『CBDを合法化した段階』。それでも、第一歩を踏み出したこと自体が素晴らしい」

では、日本市場の最大の課題は何か。

彼の答えは、規制の細部ではありませんでした。

「日本は伝統的に保守的な社会で、過去80年の大麻プロパガンダの影響も色濃く残っている。おそらく日本の大麻使用者のほとんどは、親にも、友人にも、職場でも、そのことを言えないでしょう」

図星です。

「ヨーロッパで言う『クローゼットから出る』こと。もちろん、明日いきなり家族に告白しろとは言いません。事情は人それぞれですから。しかし、社会的偏見が続く限り、政策は前に進まない。これは法律の問題というより、文化の問題。だからこそ、教育が必要なのです」

さらに、超高齢社会・日本ならではの視点も。

「私が医療大麻クリニックを運営していた頃、患者の平均年齢は約49歳。想像よりずっと高齢でした。高齢者が服用する多くの薬は肝臓や腎臓に負担をかけますが、カンナビスは同様の効果を、より少ない副作用で提供できる可能性がある。65歳以上が人口の3割に迫る日本でこそ、注目されるべきテーマです」

そして、こんな夢も。

「いつか東京か京都で、『ICBC』を開催したいと本気で思っています。私の父は1980年代、トヨタ生産方式やカンバン方式を学ぶために、よく日本へ通っていました。日本は世界で最も魅力的な国の一つです。地元の人だけでは届かないメッセージも、海外の専門家が敬意を持って伝えることで、社会に響くことがある。日本には、『ICBC』のようなイベントが必要だと思います」

栽培だけがビジネスではない。日本の事業者への提言

ICBC CEO Alex Rogersがスイス・チューリッヒの街中で白いセーター姿で両手を広げて挨拶する笑顔のポートレート。背景にチューリッヒの街並み

最後に、CBD・ヘンプビジネスに挑む日本の読者へ、助言を求めました。

「規制がどの段階にあろうと、ビジネスチャンスは常にあります。CBDビジネスは、すでに日本で成立している。法改正が進めば、先行者として優位に立てます」

「そして重要なのは、栽培だけがビジネスではないということ。ヨーロッパで利益を上げているのは、栽培者だけではありません。卸売、仲介、GMP加工、品質管理。植物に直接触れない周辺産業にこそ、大きな機会がある。私自身、カンファレンスというサービス業で成功してきました」

「最後にもう一つ。政策とビジネスは『鶏と卵』の関係です。政策が変わるからビジネスが生まれるのではない。ビジネスが育つから、政策が動く。政治家はお金が動くところを見ます。日本の事業者は、自ら産業の可能性を示し、その市場価値を政治に伝えていく必要がある。日本市場のポテンシャルは、最大で500億ドル規模になり得るのですから」

まとめ

路上の署名集めから始まり、挫折と獄中生活を経て、世界80カ国の起業家が集う国際会議のトップへ。

アレックス・ロジャースの半生は、「斬り込む勇気」と「待つ忍耐」、そして「過ちを認める誠実さ」を併せ持つ、侍の生き様そのものでした。

「また『ICBC』で会おう。必要なものがあれば、いつでも連絡してくれ、ブラザー」

インタビューの終わり際にそう笑った男は、今日もベルリンで、世界の産業人たちを迎え入れています。

その舞台が東京になる日は、来るのでしょうか。

項目情報
企業名International Cannabis Business Conference(ICBC)
設立年2014年
代表者アレックス・ロジャーズ
所在地Ashland, OR, United States, 97520
事業内容国際大麻ビジネス会議の企画・運営
URLhttps://internationalcbc.com/

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シリーズ『世界の大麻侍』

21世紀、大麻・ヘンプ産業という名のカオス。

この不透明な業界で、それぞれの立場から、業界の夜明けを信じて戦うプロフェッショナルたちがいます。

彼/彼女たちの共通点は、その魂に、日本の武士道にも通じる誠実さと勇気を宿していることです。

本シリーズでは、世界中の最前線で活躍するプレイヤーを訪ね、大麻侍が守り抜く「信念の形」を解き明かしていきます。

本記事は、世界の大麻ビジネスの実情をレポートするものであり、日本国内での違法薬物の使用、所持、栽培、売買等を推奨・助長する意図は一切ありません(THCを含む大麻製品は、日本の法令で厳しく規制されています)。

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