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『カンナトレード2026』現地レポート|25年の歴史が映し出す、スイス独自の大麻市場

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Canna Trade International Hemp Fair + Festival 25周年記念ポスター。緑色の大きな大麻の葉が黄色い背景に描かれ、右上に『canna trade』のロゴ、緑の円形シールに『25 YEARS』、下部に『29–31 May 2026 Halle 622, Zurich Switzerland』のイベント情報が記載されている。

世界一の物価、世界一の管理水準、そして世界でも珍しい4つの公用語を持つ国。

そんなスイスで、四半世紀にわたって続けられてきた大麻見本市があることをご存じでしょうか。

2026年5月、25周年を迎えた『カンナトレード2026(CannaTrade2026)』を訪れました

https://www.cannatrade.ch/

カンナトレード公式サイト

欧州大麻市場が医療大麻へと大きく舵を切る中、スイスはいかなる独自路線を描いているのか?

現地で見えてきたのは、単なる大麻カンナビス関連の見本市ではなく、スイスと欧州における産業の歴史そのものを映し出すイベントでした。

BIOBIZZブースを中心とした大規模な国際ヘンプ・CBD展示会の会場風景。カラフルなアートウォールや多数の出展ブース、来場者で賑わう活気あるイベントホール(Canna Tradeや類似の国際展示会)の俯瞰写真。

会場となった『Halle 622』には、医療用大麻、CBD製品、栽培技術、ヴェポライザー、食品、化粧品など、多様な企業が集結。

欧州各国から業界関係者や消費者が訪れ、最新の市場動向や規制の方向性について活発な情報交換が行われています。

Canna Trade 2026 会場の外観。青空の下、大型倉庫風の建物前に黒いテントと金属製のバリケードが設置され、スタッフや来場者が準備中のイベント入口風景(Halle 622, Zurich)。

今回、特に印象的だったのは、まず『カンナトレード』が歩んできた25年の歴史です。

主催者のマルコ・クーン(Marco Kuhn)氏によれば、そのルーツは1997年に遡ります。

Canna Trade 25周年イベント:Marco Kuhn氏の表彰スピーチとパーティー会場の賑わい

当時、スイスではTHCを含むバッズが「Duftsäckli(香り袋)」と呼ばれる名目で販売されていました。

法的なグレーゾーンの中で、大麻産業はこの時期に急成長していきます。

Canna Trade 25周年イベントの賑わう会場風景。左:大勢の来場者がオレンジ色のテーブルで飲食・交流する屋内ホール(CB Lounge / CANNABIGIA)。右:屋外エリアでたくさんの人がテーブルを囲む活気あるフェスティバルシーン。

スイス国内ではパン屋よりも大麻ショップの方が多いと言われるほど市場が拡大し、世界中から事業者が集まる“大麻の聖地”として知られていたといいます。

Canna Trade イベントの賑わう屋外エリア。左:大勢の来場者がオレンジ色のテーブルで飲食・交流する活気あるフェスティバル会場。右:フードトラック前でメニューを見て待つ人々(Kempf-Risottoなど)。晴れた日の明るい雰囲気。

その流れの中で1997年に誕生した『カンナトレード』は、ドイツの『メリー・ジェーン(Mary Jane)」やオランダの『カンナビス・カップ(Cannabis Cup)』と並ぶ、欧州有数の大麻見本市へと成長しました。

しかし2000年代後半、各国の規制強化によって市場環境は急変します。

種子販売規制などの影響で展示会の存続そのものが危ぶまれ、主催者たちは粘り強く開催を続けたものの、ついに2011年には一時休止を余儀なくされました。

それでも『カンナトレード』は終わりませんでした。

2016年以降、CBD市場の本格化を追い風に、見本市は再び大きく飛躍を遂げます。

Canna Trade 会場に向かう道中の銀色バン。道路脇に停車し、ドアを開けて荷物(スーツケースや段ボール)を積み下ろし中の人々。晴れた青空の下、森と田園風景が広がるチューリッヒ近郊の道路風景。

さて、スイスは日本と比べれば大麻やドラッグに対して寛容な国です。

とはいえ、品質と管理においては「さすがスイス」と言うべき厳格さがあります。

欧州の真ん中に位置していながら、スイスはEU(欧州連合)に加盟していません。

そのため国境管理は今もしっかりと機能しています。

筆者自身、チェコから車でドイツを経由して入国しましたが、国境での警備は予想以上に厳重でした。

車は停車を求められ、ドラッグテストの実施、そして手袋をはめた警察官による車内の徹底チェック。

違法な物品や関税対象品の持ち込みには、特に厳しい目が向けられます。

左側:GreenCheck マルチドラッグテストキット(6種パネル)、右側:ガソリンスタンドで警察官が黒いSUVのトランクを検査している様子

このように、物価も管理水準も世界屈指のスイスでは、見本市への運送・出展・販売に至るまで、他の欧州諸国以上に厳格な管理が行き届いています。

そのためスイスの『カンナトレード』は、他の欧州の大麻見本市とは趣が異なります。

欧州の常連ブランドが少なく、出展者も来場者もスイス人が中心。

「スイス独自のマーケット」が確かに存在していると、現地で強く感じました。

AST NaturalsのCBDスキンケア製品展示。ガラスショーケース内に並べられたCBDクリームジャー、CBDセラムボトル、商品箱

次に印象的だったのは、医療用大麻への強いフォーカスです。

長い歴史を持つ『カンナトレード』は、いまや欧州市場の変化を映し出す重要なプラットフォームとなっており、その視線は明確に「医療用大麻」へと向けられていました。

Medical Cannabis Pavilion at a trade show in Switzerland. Medcan Medical Cannabis Verein Schweiz (booth 173) and Evidena Care exhibition stands with Swiss flags, cannabis product displays, informational banners, and visitors browsing the booths.

会場内で大きな存在感を放っていたのが、スイス企業のみで構成された「メディカルパビリオン」です。

医療用大麻やその周辺領域に特化した企業が並ぶ、専用セクションでした。

筆者はこれまで、ドイツ、スペイン、チェコなど欧州各地の大麻関連見本市を数多く取材してきました。

しかし、医療用大麻に絞った専用セクションを目にしたのは、今回のスイスが初めてです。

MEDCAN医療用大麻ブースで、ブロンドの女性スタッフがバックパックを背負った男性来場者と会話している様子。背景にMEDCANロゴ、SGCM・SSCMのバナー、患者支援の紫のトートバッグが見える医療用大麻展示ブース。

今回の取材で見えてきた、現在の欧州市場と規制の傾向は、次の3点に集約されます。

  • CBDの1日あたり摂取上限の引き下げ
  • GMP(医薬品製造管理基準)やノベルフード規制に代表される、品質認証と安全基準の再定義
  • 違法マーケットの排除と、カンナビノイドの管理体制を強化した上での合法化・正規流通化

これらの傾向が重なり合いながら、欧州の大麻市場は確実に「医療用大麻」の方向へと舵を切っています。

Medical Cannabis Pavilionの展示ブース。Evidena CareのCannabis TeleMedizin(遠隔医療)ブースと大きなHOFFMANN APOTHEKEのホイール(抽選機)、Rosengarten Apotheke AG、Swiss Bio Pharma AGのブースが並ぶスイス医療用大麻展示会の様子。

しかしスイスはそれだけではありません。

企業による研究開発や医療用製品の輸出入、さらには臨床研究に関する展示も着実に増えています。

スイスの大麻産業は今、嗜好品市場としてのTHC製品、健康・ウェルネス市場としてのCBD製品、そして本格的な医療産業、この「三刀流」で発展していると言えるでしょう。

AstraSana Holding AGの医療用大麻展示ブースと、Women's Cannabis ProjectのEliane Eggler氏が登場する女性の健康と大麻に関する大型バナー。CannaTrade26のスイス医療用大麻イベント会場。

さて、会場は中も外も活気にあふれています。

最近の欧州見本市では、嗜好用大麻の関連グッズだけでなく、半合成カンナビノイド、クラトム(東南アジア原産の植物)、カヴァ(南太平洋の嗜好植物)、マジックマッシュルームといった、大麻以外の嗜好品・代替植物の出展も急増しています。

しかし、スイスの『カンナトレード』では、これらの取り扱いがすべて主催者によって厳しく禁止されています。

「大麻のみを扱う見本市」というスイスらしい厳格な姿勢が、ここにも表れています。

欧州のカンナビス展示会で撮影されたブース風景。左にはガラス瓶に入ったカンナビスフラワーや関連グッズ、右にはサステナブル素材を活用したアパレル製品が展示されている。

逆に、思いのほか、ヘンプ系アパレルやカンナビス&アート関係のブースが目立っています。

欧州のカンナビス展示会会場の様子。来場者が行き交う通路沿いにアート作品やカンナビス関連製品を展示するブースが並び、多様なブランドが出展している。

他の欧州見本市では下火になりつつあるヘンプ食品やCBDオイルといった定番アイテムも、スイスではいまだ健在です。

古き良き大麻産業の姿を残しているのも、スイスらしい特徴と言えるでしょう。

欧州のカンナビス展示会で展示されたヘンプフラワーとハシシ製品。ガラス瓶に入ったフラワーと、品種ごとに分類された濃縮樹脂製品がテーブル上に並ぶ。

もちろん、他の見本市と同様の定番ラインナップも揃っています。

大麻の種、THC1%未満の乾燥大麻やハシシ、栽培用の肥料やライトなどが販売されていました。

欧州のカンナビス展示会で紹介された栽培設備と培養土。左には屋内栽培用グローテントとLED照明、右にはココヤシ培地や有機培養土のサンプルが展示されている。

また、カンナトレードでは大麻をテーマにしたカンファレンスも恒例イベントの一つです。

業界関係者が登壇し、市場動向や規制について議論を交わす場となっています。

今回のカンファレンスで印象的だったのは、英語よりもドイツ語での議論が中心だった点です。

欧州のカンナビス展示会で開催されたパネルディスカッション。業界関係者が登壇し、カンナビスビジネスの成長戦略や女性リーダーシップについて議論している。

ちなみにスイスは、東部・中部のドイツ語、西部のフランス語、南部のイタリア語、そして南東部の一部で話されるロマンシュ語と、4つの公用語を持つ世界でも珍しい多言語国家です。

面積は九州とほぼ同じながら、ひとつの国の中に複数の言語圏が共存しているのです。

欧州のカンナビスコンテスト授賞式。左には受賞トロフィーが並び、右では受賞者たちがステージ上で表彰を受けている。

もうひとつの恒例イベントが『スイスカンナビスカップ』です。

Switzerland’s Cannabis Cup

スイスカンナビスカップ公式サイト

欧州の多くの大麻見本市では、主催者が同時開催企画として、乾燥大麻・ハシシ・レジンといった部門ごとに年間最優秀を選ぶコンクールを開催しています。

『スイスカンナビスカップ』も、その流れを汲む大会です。

欧州のカンナビス展示会で開催されたローリングコンテストと交流エリアの様子。参加者が技術を競い合い、来場者同士が情報交換を行っている。

ほかにも、ジョイントを巻く速さを競う「早巻き大会」が恒例企画として開催されています。

会場は、来場者が大麻をリラックスして楽しむためのスペース「チルルーム」の隣。

和やかな雰囲気の中、白熱した競技が繰り広げられていました。

欧州のカンナビス展示会で行われたスケートボード、ライブペイント、ガラス細工の実演。カンナビスカルチャーとストリートアートが融合したイベントの様子。

スケボーエリア、グラフィティエリア、ガラスボング(大麻用の水パイプ)の実演ブースなど、商業的な展示だけでなく、大麻を取り巻くカルチャーまでも楽しめるのが『カンナトレード』の魅力です。

屋内栽培施設で育てられるカンナビス植物。左は開花期の成熟した花穂、右は育苗段階の若い株がLED照明の下で管理されている。

以上、25周年という節目を迎えた『カンナトレード2026』は、スイスの現代大麻史を読み解く絶好の場でした。

グレーゾーンの時代から始まり、規制の波に揉まれ、CBDの追い風で復活し、いま医療大麻という新たな段階に踏み出している。

この25年の歩みは、欧州の大麻産業の縮図そのものです。

そして注目すべきは、スイスがそのすべての段階を、世界トップクラスの「品質と管理」を保ちながら歩んできたという事実です。

寛容さと厳格さ、嗜好と医療、伝統とイノベーション。

相反するものを矛盾なく両立させる「三刀流」のスタイルは、いま医療大麻の制度化が始まったばかりの日本にとっても、示唆に富むモデルケースと言えるでしょう。

品質と管理の国スイスが、次の25年でどのような独自路線を描いていくのか。

スイス独自のマーケットの行方を、引き続き追いかけていきたいと思います。

※本記事は、世界の大麻ビジネスの実情をレポートするものであり、日本国内での違法薬物の使用、所持、栽培、売買等を推奨・助長する意図は一切ありません(THCを含む大麻製品は、日本の法令で厳しく規制されています)。

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