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「一番好きなお茶は、大麻のお茶」そう言える息子を育て、100年の嘘に立ち向かう大麻ジャーナリスト

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Cannareporterの編集長、Laura Ramos(ラウラ・ラモス)

2024年6月25日、ロンドン。

ヨーロッパ最大の大麻業界カンファレンス『Cannabis Europa』の壇上で、Laura Ramos(ラウラ・ラモス)は「ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤー」として表彰されました。

彼女が運営する大麻専門メディア『CannaReporter(カンナレポーター)』は非営利です。

Actualidade da indústria da canábis

参考記事:カンナレポーター公式サイト

2017年以来、広告収入でかろうじて運営し、「大麻という植物について、正しい情報を届ける」ためだけに続けてきた7年間が、業界に認められた瞬間でした。

教育省出身の大麻ジャーナリスト

ラウラは、1999年から複数のポルトガル紙でキャリアを積み、2004〜2005年には、イタリアでポルトガルの日刊紙の特派員として記事を寄稿していました。

帰国後はポルトガル教育省の報道官(2006〜2009年)を務め、国家広報の最前線に立ちます。

そのラウラが、2017年に『カンナレポーター』を立ち上げたのは、100年分の誤情報への憤慨/屈辱からでした。

文部科学省の報道官が大麻メディアを立ち上げたようなもの。

日本で同じことが起きたら、どれだけのニュースになるでしょう?

「アメリカから始まった大麻禁止のアジェンダが世界中に広まり、メディアは大麻を邪悪な植物だと信じ込ませました。今でも多くの人がその話を信じているが、真実ではありません。実際はその逆で、強力な薬効を持つ植物なんです」

2018年、ポルトガルで医療大麻の規制が整い、一夜にして産業が生まれました。

ラウラはその年に医療大麻の年次カンファレンス『PTMC(Portugal Medical Cannabis)』を共同設立し、医師・研究者・経営者・規制当局者・政策立案者・患者が同じテーブルで話す場をつくりました。

Portugal Medical Cannabis

参考記事:PTMC公式サイト

患者たちの現実を追ったドキュメンタリー『Patients(ポルトガルの患者の現実を追う)』は、世界最大級のカウンターカルチャー・サステナビリティフェスティバル『Boom Festival 2023』の公式セレクション作品に正式選出。

一人のジャーナリストが、記事・カンファレンス・映像の三方向から誤情報と闘っています。

「非犯罪化」では、不法市場は消えなかった

薬物政策の話になると、必ず名前が挙がる国があります。

ラウラの出身地でもあるポルトガルです。

2000年、ヘロインもコカインも含む「全薬物の使用」を非犯罪化。

もう26年間、使っても刑務所には行くことはありません。

「薬物政策のイケてる国・代表」です。

進歩的に聞こえますが、ラウラはより現実的で冷静な見方をしています。

「購入も、販売も、栽培も禁止のまま。では、人々はどこから手に入れるのか。非犯罪化はある意味で、不法市場の繁栄を許しています」

一方ドイツは、成人向け使用の規制化まで踏み込みました。

不法市場の製品は安全ではありません。

カビやその他の汚染物質が含まれている可能性があります。

安全な流通を実現できるのは規制だけであり、これは公衆衛生の問題です。

ヨーロッパで医療大麻ビジネスを運営するには、医薬品グレードの基準適合(EU-GMP)が求められ、多大な資本と時間の投資が必要です。

規制は国ごとに異なるため、国境をまたいだ事業展開は複雑になります。

また、すべての輸出入は『INCB(国際麻薬統制委員会)』への報告義務があります。

一見、合法化が進むヨーロッパでも、問題は山積みなのです。

「今この産業で働く人は、後続国のために市場を開拓しているパイオニアです」とラウラは言います。

日本のCBD事業者も、ある意味でその文脈の中にいます。

その論点を発信し続ける『カンナレポーター』は、現在、日本語を含む17言語に自動翻訳され200カ国以上で読まれています。

一貫して際立つ事実がひとつあります。

日本は常に読者数上位10カ国に入っているということです。

読者が最も関心を持つのは規制の変更と医療的な用途、ハームリダクションだといいます。

そして日本で最も読まれた記事は「バッドトリップを避ける方法と、その対処法」。

「日本では情報が不足しており、偏見が強いように感じます。好奇心はあっても情報が足りないのです。この記事の目的はハームリダクション。情報は常に有用です」

禁止が情報を奪い、情報の不在が恐怖を生みます。

恐怖が偏見を強化します。

ラウラはその悪循環を、記事一本一本で断ち切ろうとしています。

バンコクでは路上販売、東京ではまるで重罪人

タイのディスペンサリー

2025年、タイのカンファレンスへ参加した後、ラウラは東京を訪れました。

バンコクの街角にはディスペンサリーが並び、人々は大麻を伝統的なウェルネスの植物として買っていた。

それがわずか数時間のフライトで消えます。

「日本の友人が大麻を渡してくれた時、『ここでは開けないで』と言いました。まるで重罪人のような振る舞いだったのです。日本にはかつて大麻栽培の伝統がありました。主に繊維や布地用の麻としてですが、アメリカから持ち込まれた禁止政策によって失われてしまいました。CBNはTHCでも向精神性物質でもないので、それを禁止することに意味はありません。」

日本でこの発言が報道されることはほぼありません。

外から見ているジャーナリストが言いやすいことでもあります。

ラウラはみずからを「活動家ではなくジャーナリスト」と位置付けます。

大麻が誰にでも合うものだとは主張しておらず、できる限り多くの情報を得た上で、慎重に使用すべきだと述べています。

THCは向精神性カンナビノイドであり、人によっては副作用を引き起こす可能性があります。

統合失調症や精神病への遺伝的素因を持つ人においては、重篤な反応を引き起こすことがあります。

だからこそ、正確な情報が重要なのです。

「より良く、より実用的な情報を提供し、人々を教育し、偏見を取り除くこと、それがジャーナリストとしての私のミッションです。」

「一番好きなお茶は、大麻のお茶」

ラウラには9歳・11歳・13歳の3人の子どもがいます。

彼女の末息子は周期性嘔吐症候群を患っており、時に激しい嘔吐発作を繰り返すことがあります。

発作の日は、目が覚めた時点ですでに吐き気を催しており、完全に衰弱しきった状態になります。

床に臥せり、顔面蒼白で、食事も取れず、飲む水を一口ごとに嘔吐し、動く気力すら失ってしまうのです。

処方薬は効果がありませんでした。

服用してもすぐに嘔吐してしまうためです。

ラウラはそんなある日の、転機となった瞬間を振り返ります。

THCと大麻の制吐作用を知っていた彼女は、従来の薬が効かなかった後、型破りなアプローチを試みることにしました。

生の大麻の花を温水(熱湯ではない)に浸した穏やかなインフュージョンをつくり、意図的に脱炭酸を避けることで、THCAが酸性形態のまま、つまり子どもにとって非向精神性の状態を保つようにしたのです。

彼は大麻、レモン、ジンジャーのお茶をティースプーン一杯のはちみつと共に少しずつ飲み、生の大麻の花を数輪噛んで飲み込み、そして再び横になりました。

「ママ、このお花の味が好きだよ」と彼は言いました。

20分後、彼はキッチンへ歩いてきてこう言いました。

「ママ、もう気分がよくなったよ。お腹が空いた」

この体験は母と息子にとって大きな転機となりました。

今では気分が悪くなると、息子は必ずこう尋ねるようになりました。

「ママ、大麻のお茶をつくってくれる?」

ある日、お店で一人の女性がラウラと息子に自家製のオーガニックバーベナティーを勧め、息子にお茶は好きかと尋ねました。

彼はこう答えました。

「うん、好きだよ。でも僕の一番好きなお茶は大麻のお茶だよ」

その女性は困惑した様子だったので、ラウラは息子がそう言った理由をきちんと説明しなければなりませんでした。

また、息子が赤ちゃんの頃に顔に絶えず出ていた湿疹も、ヘンプクリームで完全に治ったことも話しました。

日本の読者の中には「子どもに?」と反応する人もいるかもしれません。

しかしその反応はどこから来るのでしょうか。

科学的根拠から?

それとも約100年前に形成された感情的な記憶から?

「子どもの頃から偏見を取り除くことができれば、人々は大麻に対する誤った認識を持たずに成長できます。」

まとめ

ラウラが生まれ育ったポルトガルは、現在カナダに次ぐ世界第2位の医療大麻輸出国となっています。

産業は成長しました。

しかし国内消費に関する規制は追いついていません。

対外的には輸出が盛んである一方、国内では不法市場が依然として存在しています。

これが「非犯罪化のみ」という政策を26年間続けた結果として証明された現実です。

日本は同じ道をたどるのか、それとも別の道を選ぶのか。

安全は禁止から生まれるのではありません。

情報と規制から生まれるのです。

かつてお店でその息子の言葉に店員を驚かせたその母親は、2024年の「ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。

大麻の真実を追い求める姿勢と子育ての哲学は、彼女の中で完全に一致しています。

「正確な情報があれば、人々は自分自身でより良い判断を下せる」

その信念だけを胸に、ラウラは今日も取材し、書き続けています。

「この植物には世界を救う可能性がある、私は本当にそう信じています」

日本で現在進行中のCBN規制をめぐる議論については、こんなメッセージを残してくれました。

「CBDは国連とWHOによって安全性が認められています。日本はいつか変わるでしょう。それまでは、信頼できる情報を探し続け、意識を高め、変化を求める声を上げ続けてください。」

シリーズ『世界の大麻侍』

21世紀、大麻・ヘンプ産業という名のカオス。

この不透明な業界で、それぞれの立場から、業界の夜明けを信じて戦うプロフェッショナルたちがいます。

彼/彼女たちの共通点は、その魂に、日本の武士道にも通じる誠実さと勇気を宿していることです。

本シリーズでは、世界中の最前線で活躍するプレイヤーを訪ね、大麻侍が守り抜く「信念の形」を解き明かしていきます。

本記事は、世界の大麻ビジネスの実情をレポートするものであり、日本国内での違法薬物の使用、所持、栽培、売買等を推奨・助長する意図は一切ありません(THCを含む大麻製品は、日本の法令で厳しく規制されています)。

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